本文へジャンプ
管理 − 苔の殖やし方 - まきゴケ
苔の植え付け方法

苔を植え付ける方法にはまきゴケ法、移植法、はりゴケ法の三つの植え方があります。まきゴケとはほぐしたコケを種のようにまいて殖やす(無性生殖)もので、時間と手間は掛かりますが、均等なマットを造り、少量のコケで殖やすことができ、小型〜中型のコケに適しています。移植とは苔の小さな塊を植付けるもので、庭や育苗箱、岩の窪みになどへの植え付けに適しています。はりゴケとはマット状に剥がしたコケをそのまま庭や培養土などにはるやりかたです。きれいな苔のマット、或いは塊を崩さないように別の場所に植え替えるもので、移植時の仕上がりが美しく、庭造りでは一般的な方法です。いずれの植え付け、管理に共通していることは、風や雨、散水による水圧などで、コケが剥がれたりして移動させないことと、安定した湿度を保つことです。環境が変わることから移植後に変色をおこすことがありますが、多くは回復し、新芽も伸び始めます。


画像は大量のコケの粉砕する機械(粉砕機)。
一般には手でもみほぐしたりふるいに押し当ててコケを細かくします。

基本的なまきゴケ

鉢や育苗箱のように丁寧な管理ができるところに適しています。庭に直接粉砕したコケをまくのは、風雨等で流されやすいなど、管理に難しいところがあります。育苗箱にまきゴケで育て、ある程度生育してから庭へ移植するようにすれば、確実に定着させることができます。密生に時間は掛かりますが、少量のコケで増やすことができ、またきれいなマットに生え揃います。
・ 培養土は黒土と川砂を基本にしていますが、水はけが良く、またある程度の保水力も必用なので、赤玉土、鹿沼土などを鉢の底にいれたり、樹皮培養土、ピートモス、赤玉土細粒などを適量混ぜるなど、コケの特性にあわせて用土を作ってください。
・ コケをほぐします。あまり細かく粉砕するよりも、ある程度大きいほうが散水時に流れにくく、乾燥に強いようで早く育ちます。余り重ならないよう均等にまき、目土には畑土に砂を多めにするか、あるいは砂だけでもよいでしょう。コケの頭が見える程度に均等に目土を撒きます。重い目土はコケの流動を防ぎます。
・ キッチンペーパーを鉢の形に整えて被せます。芽が出始める頃の乾燥を防ぐ一時的なもので、薄めのものが適しています。薄いものは水やりで崩れやすく見た目も悪くなりますが、パルプなので気にならなければ取り除く必要はありません。
・ 十分に水を与えます。ペーパーが乾燥しない程度の水やりで良いでしょう。芽がポツポツ伸び始めるのに1月程度、それからある程度生え揃うまでとくに乾燥に注意していください。







スギゴケのまきゴケ(コスギゴケ、タチゴケも同じ)

大型のスギゴケは長いものでは10cm以上のものもありますが、旺盛に芽を伸ばすのは青い葉の部分です。ハサミで刈り取った物はすでに一本一本ばらばらになっていますが、土が付いている塊は手で揉むようにしながらほぐしてください。コケに付いている土も細かくして使います。育苗箱に培養土を入れ表土をならしておきます。細かくしたコケを均等にまきます。コケ同士があまり重ならないようまいてください。標準の目土に少し黒土を足して目土入れをします。大型のコケなので目土の量は多めになりますが、1/3ほどコケの頭が出るぐらいにします。ウマスギゴケ、オオスギゴケには軽石砂を目土に使うこともできます。

右画像
まきゴケによるタチゴケで3ヶ月目ぐらいの。右側の白いものは保湿用のペーパーを再び被せたもので、左側は時間とともにペーパーが腐って消えています。

あまり重ならないようにまきます。


スナゴケのまきゴケ

スナゴケは長さが1cm〜4cmぐらいの中型で、まきゴケで殖やしやすいコケです。まきゴケには丈の長く伸びたもののほうが発芽数も多いようです。種にするスナゴケは半日陰の涼しいところで数日掛けてよく乾燥させます。カラカラに乾燥したスナゴケは、手をこするように軽く揉むだけでもも細かく粉砕することができます。スナゴケの場合は細かくしても旺盛に発芽します。もちろん湿った生ゴケをそのまま細かくほぐしてまくこともできます。生スナゴケには土と一緒に小さな砂利や砂が多く含まれることがあります。粉砕した種ゴケに小石が混ざっても何ら問題はありませんので、わざわざ取り除く必要はありません。
育苗箱に砂を多めに混ぜた培養土を入れ表土をならしておきます。細かくしたコケを均等にまきます。コケ同士があまり重ならないようまいてください。標準の目土に川砂を足して目土入れをします。1/3ほどコケの頭が出るぐらいにします。

目土入れ前


3ヶ月目ぐらい


ハイゴケのまきゴケ
(シノブゴケなどほふくするコケも同じ)

ハイゴケは土の付かない苔です。コケは粉砕するよりも、引っ張るようにほぐして大きめなまま使います。。生ゴケマットの厚みのあるものは、裏側の多くが枯れたような褐色をしています。まきゴケの種としては青い部分のほうが発芽も旺盛になりますが、褐色したハイゴケも保水という点で役にたちますので、わざわざ取り除く必要はありません。
倒木や岩上、茅葺き屋根などに群生が見られるように、ハイゴケは必ずしも土を必要とはしません。このため標準的な培養土には繊維質の樹皮培養土やほぐしたシュロの皮などをうまく混ぜてやると(混ぜるのが難しい場合はそのまま樹皮培養土などを用土として使ってもかまいません)、その繊維に絡むように育ちます。育苗箱に培養土を入れ、表土をならしておきます。コケはあまり重ならないように均等にまいてください。目土は標準の目土を使います。1/3ほどコケの頭が出るぐらいの目土入れをします。ハイゴケは用土に根を張るコケではないので、目土が重石の代わりにもなります。このため川砂を少し足して重たくした目土を入れると良いでしょう。

目土入れ前の状態


コウヤノマンネングサ・フジノマンネン・ヒノキゴケのまきゴケ

スギゴケ同様いずれも大型のコケです。スギゴケと違うのは日陰から半日陰を好み、比較的湿潤な場所、腐葉土質の柔らかい土によく自生しています。大型で湿潤、日陰を好むこれらのコケには、細かく砕くまきゴケ法があまり適しておらず、移植法のほうが定着も良いようです。まきゴケで密生するまでに順調でも3年ほどかかります。その間を乾燥させないように管理するのは手間もかかります。
もちろんまきゴケで殖やすことも可能です。コウヤノマンネングサは地下茎の根を育苗箱の培養土の上に広げていきます。新しい芽が見られる新鮮な根を使うようにしてください。ヒノキゴケはスギゴケと同様に一本一本手でほぐすようにします。
育苗箱に培養土を入れ表土をならしておきます。標準の培養土に充分に粉砕した腐葉土を混ぜると良いでしょう。これらのコケは土の中から新芽を旺盛に伸ばすため、培養土も通気性の良い土作りをしてください。ほぐしたコケをあまり重ならないようにまきます。標準の目土に少し黒土を足して目土入れをします。大型のコケなので目土の量は多めになります。


コウヤノマンネングサ


ヒノキゴケ

山苔のまきゴケ

山苔はアラハシラガゴケ、ホゾバオキナゴケ、オオシラガゴケなどの小型のコケです。まいた後の発芽は早く、一ヶ月目ぐらいからポツポツと芽を伸ばしはじめ、数ヶ月で表土全体が均一なコケで覆われるようになります。しかし、徒長は遅いため、まきゴケ法で何センチもの厚みのあるマット状にするにはホソバでも10年以上かかることもあり、庭作りなどで早くマット状に育てたいときは移植法がよく、作品作りなど完成度の高い作品にははりゴケ法が、こけを殖やしたいときにはまきゴケ法が適しています。
まきゴケではたねゴケ(山苔)を細かく粉砕するほど発芽数が増えます。たねゴケは充分に乾燥させて手で強く揉むと微塵に粉砕することができます。育苗箱に標準的な培養土を入れ表土をならしておきます。杉や檜を粉砕した樹皮培養土との相性も良く、これを少量混ぜたり、あるいは単体で培養土にしても良いでしょう。微塵にしたたねゴケを薄く表土にまいて、薄く目土(標準の目土)をいれます。散水するうちにたねゴケが露出するようならば薄く目土を加えます。ある程度発芽する数ヶ月をペーパーで覆うやり方も効果的です。
シラガゴケの仲間は杉や檜の根元のような日陰で雨の当たらない乾燥したところを好みます。このため栽培するときの水やりも徐々に少なめにし、乾燥気味に育てるようにすれば生育密度のよいきれいで丈夫なコケに育ちます。


植え付け半年目

植え付け3年目

湿潤を好むコツボゴケ、ヒノキゴケなどのまきゴケ

湿潤を好むコケはほふくするものや大型のもの、小さなものと個性も様々ですが、多くに共通しているのは葉が半透明で薄く、徒長が早いこと、また半日陰で乾燥に注意してやれば良く育つものが多いようです。
ここでは普通に自生しているコツボゴケでまきゴケのやり方を説明します。
コツボゴケは大型のコケであかるい半日陰地の湿潤なところに普通に見られます。横にほふくするように広がり、比較的早く密生し育てやすいコケです。たねゴケは細かく粉砕せず、手で引っ張るように一本一本ほぐします。育苗箱に標準の培養土を入れ表土をならしておきます。たねゴケをくあまり重ならないように表土に並べ、薄く目土(標準の目土)をいれます。散水するうちにたねゴケが露出するようならば目土を加えます。湿潤を好むコケは乾燥に注意すれば良く育ちます。


1年目のコツボゴケ